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2022/08/17

ROAD IMPRESSION

アルピーヌA110はこの度のモデルチェンジで、A110、A110 GT、A110 Sという3モデル構成となった。以前『リネージ』と呼ばれていたラグジュアリーテイストも感じるA110 GTを、森口将之が試乗する。

text:Masayuki MORIGUCHI
photo:Keigo YAMAMOTO

以前A110リネージと呼ばれていたモデルが、今回A110 GTに進化。パワーユニットもA110 Sと同じ、最高出力300psとなった。
今回試乗レポートを担当したのはモータージャーナリストの森口将之氏。

“GT”の名を得た新型で感じる全方位的進化

2022年、アルピーヌA110はセカンドステージに入った。デビュー以来初の改良が施されるとともに、グレード体系がA110、A110 GT、A110 Sの3タイプとなり、キャラクターが明確になった。

ではどこが変わったのか。限定車に設定されたことがある深い青、アビスブルーをまとったA110 GTを借り出すと、まず後ろ姿の違いに気づいた。”ALPINE”の下に”A110 GT”のロゴが追加されたのだ。これは全車共通の変更となる。

ホイールは、ブラン グラシエのボディカラーではリネージ時代と同じ『レジェンド』が受け継がれる一方、ブルー アビス Mとブルー アルピーヌ Mでは、細いスポークがエレガントな印象の『グランプリ』となった。

こちらがGTのブルー アビス Mに採用されるグランプリのホイール。グレードやボディカラーにより異なる、全6種類のデザインが用意されている。

インテリアはリネージの特徴を受け継ぐが、各部にアップデートが実施されている。最大のトピックは全車に、Apple Car PlayとAndroid Autoに対応した新しいマルチメディアシステムが標準搭載されたことだ。とりわけグランドツーリングを想定したA110 GTには待ち望まれていた装備だろう。

センターコンソールも変わった。上下2段の機能的な作りであることは同じだが、下段のレイアウトが変わり、ETC端末が内蔵されるとともに、全体がブラックの金属プレートで覆われ、”A”のロゴマークが入った。

後方に目をやると、バルクヘッドに近い場所に比較的深いコンソールボックスが用意されたことに気づく。どちらも実際にこのクルマを使うオーナーにとってはありがたいバージョンアップだ。

ブルー アビス Mの外装と組み合わせられる内装はブラウン系レザー。そこに採用されるステッチがブルーであることは、フランスのセンスしか感じない。
GTのシートは6ウェイスポーツを採用。サベルト製ということでスポーツ性能と長距離での快適性を両立させているのが特徴。

メカニズムではエンジンの性能向上がトピックとなる。従来のリネージは最高出力252ps、最大トルク32.6kg-mでピュアと同じだったが、新型A110 GTは300ps/34.6kg-mと、同じ新型のA110 Sと共通になった。

7速DCTをマニュアルモードにして走り始めると、ターボの立ち上がりが明確になったことに気づく。トルクアップが実感できるのだ。そのまま加速を続けると、高回転までストレスなく吹け上がり、回転も滑らかになった。全方位的に進化していることが理解できた。

スポーツモードに切り替えるとレスポンスが鋭くなり、クラシックA110を思わせるサウンドもさらに活気づく。A110 Sと同じユニットであることを実感する切れ味だ。おかげで気がつくとこのモードで走っていた。

乗り心地はリネージより少し硬くなったような気がした。ニュースリリースには明記はないが、300ps/34.6kg-mに対応したチューニングがなされているのかもしれない。とはいえ相応の厚みを持つレザーシートのおかげで不快ではなく、フラットかつソリッドになったという印象のほうが強い。

それにコーナーでのしっとりした接地感は健在。だからこのうえなく素直なハンドリングを安心して究めていけるし、スロットルやブレーキの操作で姿勢を変えていくという奥深さも堪能できる。

それでいて高速道路では、サブウーファーを加えたフォーカルのサウンドシステムが届ける上質な音に耳を傾けつつ、距離を重ねていける。GTという名前にふさわしい1台に仕上がっていた。

取材車のボディカラーはブルー アビス Mで、このA110 GTでしか選べない色。GTは他にブルー アルピーヌ Mとブラン グラシエ(受注生産)が選べる。